2017.03.21

協力雇用主

協力雇用主って,ご存じですか?

協力雇用主とは,犯罪や非行の前歴のために定職に就くことが容易でない人々を,その事情を理解した上で雇用し,更生に協力する民間事業主です(管轄地域の保護観察所にて登録制度があります)。

2月11日・12日,鹿児島市にて全国付添人経験交流集会(日本弁護士連合会が主催する,子どもの権利にかかわる活動をする弁護士の経験交流・研鑽のための大会です)が開かれました。その中で,福岡県協力雇用主会会長の野口さんのお話を聞く機会を得ました。

野口さんはガソリンスタンド経営会社の社長さんですが,これまで多くの非行歴のある少年を自身の会社で雇用してきました。

少年たちを更生へと導くのは容易なことではありません。非行傾向のある少年の多くは夜型生活で,朝,定時に出勤することが困難です。そこで,同社では雇用当初は午後の数時間のみの勤務とし,徐々に勤務開始時間を前倒しして朝型に修正していきます。それでも朝出勤できない少年には,先輩従業員が自宅まで迎えに行き,着替えさせて職場まで連れてくるとのこと。このような手厚いフォローに加え,良いところを見つけて褒める,握手やハグを通じて信頼の気持ちを身体的にも伝えていく・・・野口さんの取組みは,まるで「育て直し」のようです。

それでも,立ち直りへの道は平坦ではなく,どの少年も一度では更生できないといいます。しかし,野口さんは何度裏切られても少年を見捨てず,何度でも受け入れます。「信じ続ければいつかは変わると信じている」「自分の居場所を見付ければ子どもは変わる」とおっしゃいます。

野口さんのような素晴らしい取組みまではできなくとも,立ち直りに向かう人たちを地域に迎え入れるという気持ちを私たちが少しずつ持てれば,私たち自身が彼らの再犯・再非行の防波堤になれるかもしれません。そのことが,誰にとっても安心で暮らしやすい社会の構築につながるのではないでしょうか。

(文責:永嶋)